直前まで行き先を迷いながら、気づけばフェリーに乗って新潟へ向かっていた。ハイエースにリトルカブを積み込み、海沿いを気ままに走る離島旅。
前編では二日かけて島の海沿いをぐるりと巡る。そこには爽やかな初夏の空気が流れ、どこまでも続く青い空と海に、何度も心を奪われた。
天気にも恵まれ、気づけば景色を追いかけるより、空の色が変わる時間を追いかけていた。
出発直前、旅先を変えた理由
毎年恒例となっている、誕生日のおひとり旅。今年も無事?妻からOKをもらえたので、フェリーを絡めて、どこか遠くへ出かけようと思った。
当初の計画では日本一周中に巡った、隠岐諸島への再訪だった。
でも運悪く、島前内航船が定期ドック実施で休止し、車両と共に島間を渡るにはかなり不便だった。さすがに一日一便だけだと、宿泊場所の制限がきつい。
次点では九州のミヤマキリシマ、稀に見る当たり年とSNSで騒がれていた。ただこれもピークを過ぎているのと、さんふらわあばかり乗るのもなぁ、と今年は我慢。
佐渡島は花の季節の縦走路や、大野亀のトビシマカンゾウなど、美しい景色を堪能するなら5月下旬〜6月上旬がベストだが、これも出遅れた感が否めない。
だけど最終的には、「初上陸」という好奇心が勝った。佐渡島に行き先は決まった。
上陸前夜、下道500km走って直江津へ

自宅のある大阪から新潟までの距離はおよそ500km。高速でサクッと行ってしまいたい気持ちもあったけど、ぼくひとりの旅はできるだけ節約したい。
高速移動だと眠くもなるし、下道でまったりドライブ。早めに出てしまえば、乗船前に少しくらい仮眠も取れるだろう。
仕事を半休で切り上げて、急いで自宅へと舞い戻る。シャワーを浴びてご飯を食べて、15時過ぎに自宅を出発した。
滋賀に抜けるまでが結構混むんだけど、時間が早かったおかげでスムーズに流れた。湖西道路を抜け、あとはひたすら国道8号を進んだ。
道の駅河野で一回目の休憩。夕日を期待したがまだお預け。そのあとは何度かトイレ休憩を挟んだが、それ以外はノンストップでひたすらハンドルを握る。
リトルカブをハイエースにトランポ

タイトルでなんとなく察すると思うが、佐渡島を巡るのはリトルカブ。島内でレンタルする訳ではなく、相棒をそのまま持ち込むことにした。
毎年恒例のこの旅は、バイクとフェリーの組み合わせが定番。ただ新潟まで原付で自走は、日程的にも体力的にも現実的ではない。
そこで以前から構想があった、ハイエースのトランポ化を実施。リトルカブは車体が軽く車高も低いので、アルミラダーでの積み込みやすさは抜群。
慣れれば積み込み完了まで、5〜10分程度でいける。親不知の曲がりくねった道路も、車体の固定も安定していて全く問題なかった。
港近くの海浜公園、静かな前夜車中泊

予定通り順調に進んでたんだけど、給油のタイミングには要注意。主要国道とはいえ8号線沿いも、夜遅いと空いているガソリンスタンドは少ない。
まだ行ける、まだ行けると先送りにしてたら、最終的にかなりやばくなった。航続可能距離6kmなんて初めて見たわ…。
基本夜間の長距離移動に備えて、20L携行缶を積んでるんだけど、タイミング悪く空だったのを忘れていて、燃料切れに恐々とする夜だった。

直江津到着後は、上越市立水族博物館うみがたり近くにある海浜公園で車中泊。といっても3時間程度の仮眠しかできなかったけど。
ここは直江津港周辺でも数少ない車中泊スポット。フェリー乗り場まで車でわずか5分と、乗船前夜泊には最適な場所だった。
トイレも夜間自動点灯でかなり清潔、駐車場も平坦で寝やすかった。街中だけど通りの道路はそこまで交通量は多くないので、夜も静かでとても快適に眠れた。

登山用の折り畳みマットを敷いて、ブランケットにくるまって仮眠した。リトルカブと隣り合わせ、かなり新鮮な夜だった。
ハイエースだとバイク積載しても、まだ一人分ぐらいの就寝スペースは確保は余裕。改めてハイエースの積載力の高さを感じた。
仮眠を終えてから少し移動、ハイエースは駅前へ預けることにした。

フェリー乗船前に、直江津前のコインパーキングに入庫。事前リサーチでは、24時間最大料金が500円と安く、駅近くで人目にも付きやすく安心感があった。
ちなみに直江津港前の有料駐車場は小型車で1時間50円、1日利用しても1,200円。そこまで高くないので、島内に持ち込まない人は港前に停めるのがいいと思う。
フェリーに乗り込み、いざ佐渡島へ


直江津港カーフェリー乗り場に到着。すでに乗用車の待機列ができていて、係員の指示でバイク勢は別レーンへと誘導される。
乗船直前に最前列へと移動し、乗船するこがね丸の前で待機。佐渡汽船のフェリーはバイクを優先的に乗船させてくれるのがありがたい。

ライダー特権で船内に一番乗りし、2等船室の場所確保。今回のスタイルだとそこまで必要に感じなかったが、充電できるコンセント付近は争奪戦だ。
各位スペースの区切りに戸棚があり、荷物やヘルメット置きにちょうど良い。平日なのもあり利用客で混雑することもなく快適だった。

船内では一枚100円で毛布の貸し出しがある。迷わずレンタルしてすぐに爆睡。夜通し運転した後に、3時間睡眠はやはりきつい…。

下船の時間が近づいて、船内のアナウンスで目覚めた。支度を済ませてデッキに出てみると、佐渡島はもうすぐそこに近づいていた。
朝の直江津は薄曇りだったが、海上を進むうちに青空が広がってくれた。船上で感じる潮風は、ちょっとひんやりして眠気覚ましにちょうどよい。
小木港に到着、佐渡島ツーリング開始

定刻通りに小木港に到着、アナウンスに従い車両甲板へと戻る。乗船と同じくライダーが優先なので、最前列で係員の合図を待つ。
ランプウェイがゆっくりと降りてゆく。この時だけは世界の動きが遅く感じる。さながらぼくたちは、まるで出走を待つ競走馬のようだ。
そして係員の合図とともに、ライダーたちは、それぞれ思い思いの方向へ散っていく。佐渡島を巡るツーリング旅がはじまる。
蒼い海を左に眺めながら時計回りで進む

小木港周辺には矢島・経島のたらい舟や宿根木など、見所が多いがまずはスルー。予報通り快晴だったので、まずは島の外周を時計周りで、最北にある大野亀を目指す。
まずはじめに足を止めたのは、南西端に位置する沢崎鼻灯台。佐渡島の灯台の中では一番の高さを誇り、ぼくが乗船した直江津-小木航路のフェリーの目印にもなる灯台。
手前には広場があり、灯台とリトルカブのツーショットを撮影。佐渡島上陸の高揚感を抱えたまますぐ走り出したが、ここでまずは一呼吸入れた。

沢崎海岸一帯は隆起波食台と呼ばれる、海底が地震によって盛り上がってできた平らな土地が広がる。少し進んだ先の道路からは、この独特な景観を一望できた。
ここは万畳敷と呼ばれる夕日の名所。潮の満ち引きによって海水が溜まると鏡のようになり、空の色が美しく反射する。佐渡のウユニ塩湖とも呼ばれ、撮影スポットとして人気だ。
ここは島をぐるりと一周したあと、もう一度夕日を狙って戻ってくることになる。

佐渡の海岸線を走っていると、道沿いに突如巨大な岩場が表れたりするから面白い。適度なアップダウンもあるので、視界に広がる景色に飽きることなく進んでいく。


素浜海水浴場を過ぎたあたり、一時的に海から離れる瞬間があった。そしてミラーに映る景色を見て、思わず足を止めて振り返った。
なだらかな坂道の続く先には、コバルトブルーの海が広がる。そばには愛車リトルカブの姿。パコブルー&佐渡ブルーのコラボ。
バイク旅だと、つい景色と愛車を組み合わせに夢中になる。この旅で海を背に走るのはここだけだったので、なかなかお気に入りの一枚だ。
目当ての食堂は休み、でも最高の昼ごはん

佐渡島と言えば新鮮な海の幸、初日のランチは長浜荘と決めていた。ここは具沢山の海鮮丼で有名な店なんだが、なんとまさかの休業日…。
Googleマップでは定休日なかったのですっかり油断していた。昨晩も朝もご飯食べてなかったので、空腹度MAXで今すぐにでも何か食べたい。
もうその辺りの適当な店に入ろうか迷ったけど、ぐっと堪えて佐渡中心街へ。

そしてやってきたのは、廻転寿司 弁慶。佐渡に本店を構えるこのお店は、魚屋直営の強みを活かして、佐渡沖で獲れた新鮮な地魚をリーズナブルに提供してくれることで人気。

まずはセットメニューのBセット(中)を注文。
中身は、中トロ・真いか・天然ぶり・あじ・白身・つぶ貝・甘えび・いくら・カニ味噌・穴子に、あら汁か海老の頭の味噌汁、どちらか好きな方が選べる。
セットには他にも単品で佐渡サーモンやぶりなど、佐渡産のネタをいくつか単品で注文。大満足のランチだった。
佐渡西側を巡りつつ、ひたすら海沿いを北上


お腹も膨れたので、佐渡一周線に戻り北上を再開。相川までは海沿いをぐるっと大回り。長手岬、夫婦岩など要所を抑えつつ、気になる場所はその都度足を止めた。

完全にノーマークだったんだけど、春日埼はすごい良かった。東屋の隣には開放的な草原が広がり、空と水平線の展望も抜群。気づけばまたもやリトルカブの撮影会。
このエリアは島の中心部からも近く、夕日の撮影スポットとしての下見も兼ねていた。実際に足を運んで春日埼がピンと来たので、ここも後編で再訪することになる。
この先の相川エリアは、佐渡金山や北沢浮遊選鉱場跡など観光名所が盛りだくさん。ただ後編でじっくりと巡る予定だったので、通り過ぎて次に向かったのは千畳敷。


ここにはフォトジェニックな橋があり、周囲には透き通った海が広がっていた。佐渡ブルーをサクっと体感するには、気軽に立ち寄れてすごく雰囲気が良い場所だった。

巨岩の間にくさび型の大岩挟まれた、弁慶のはさみ岩も圧巻。佐渡弁慶が鬼と力比べをした時に、投げ飛ばした岩が岩壁にすっぽり挟まったという伝説で知られる。
まあそれはそれとして、なんでこんな奇景が生まれるんだろうね。ほんと不思議。”落ちない”岩として縁起が良いとされ、合格祈願にも人気のスポットらしい。

この先にある尖閣湾や平根崎は、時間の都合上一旦パス。この辺りは今見るべきか、後に回すか結構迷いながら進んだ。この辺りで佐渡の大きさを実感していた。
まだ佐渡の中心からそう離れておらず、後日再訪するチャンスありと判断。最北周辺で見逃せない場所を優先することにし、ここから小一時間は走りに集中。

佐渡北部にある跳坂を登り切ると、思わず声を上げたくなる絶景が広がる。ここは「Z」の字に似た急カーブを描くことから、Z坂とも呼ばれている。
佐渡島はサイクリストにも人気で、島の外周を一周することをサドイチと言う。ここはサドイチの最大の難所の一つとして知られる。
ここを登っていると、ふと自転車日本一周していた記憶が脳裏に浮かぶ。何度も激坂に泣かされていたので、バイクの偉大さを噛み締めながら登った。

そして、この舟隠し岩は完全にダークホース。たまたま休憩中にGoogleマップの口コミで見かけて、何気なく寄ってみたが大当たり。
ここはかつて舟にかかる税金徴収を逃れるために、漁民が舟を隠していた場所らしい。波がほとんど立たず、岩場にひっそりと佇む姿はとても神秘的だった。
佐渡の海はどちらかというとコバルトブルー、青みが強いイメージだったが、ここはもっと淡い水色で、透明度が抜群。佐渡の中でもお気に入りの場所の一つ。
花の見頃を過ぎた初夏の大野亀を歩く

そしてようやく本日のメインの登場。海に突き出た巨大な一枚岩、大野亀が見えてくる。トビシマカンゾウの群生地としても有名で、佐渡屈指の絶景スポットだ。

トビシマカンゾウは、国内で二か所しか自生していないとても貴重な花。開花時期は例年5月下旬~6月上旬と短く、ギリギリ間に合うかと期待していたが、残念ながら見頃は過ぎていた。


それでも海側の斜面には、まだまだ多くの花が残っていた。青い海と黄色いお花のコントラストが美しい。ベストシーズンは逃したけど、十分すぎるほど美しい風景だ。

夕暮れが近づこうとする時間帯、太陽が傾きによる斜面の陰影が際立つ。日が当たる部分のトビシマカンゾウは、まるでスポットライトが当たったかのように輝く。
せっかくなので大野亀の頂上を目指してみることに。標高167メートルと大した高さはなく、片道15分ほどで登れる。とはいえ、後半は急坂なので割と疲れた。



頂上には善宝寺の石塔が祀られていて、外海府の海岸線や青く澄んだ日本海を見渡せる。360度の大パノラマが広がるので、この開放感を味わうためだけに登る価値はあると思う。
頂上付近は藪っぽくなってるので、汚れて困る服装なら中腹まで少しだけ登るのもおすすめ。振り返れば高さのあるダイナミックな視点で大野亀を見下ろせる。
佐渡最北端、二ツ亀で絶景キャンプ

大野亀を堪能したあとは、本日の野営地である二ツ亀キャンプ場へ。隣接するSADO二ツ亀ビューホテルが管理、ホテルロビーで受付。一泊1,500円也。
節約旅なので当初は無料キャンプ場のみで計画していたが、ここはどうしても泊まりたかった。二ツ亀は日本でも珍しい水平線から太陽が昇り、水平線に太陽が沈む場所。
つまり夕日と朝日を同じ場所から見られる、全国的にも非常に珍しいキャンプ場だ。ましてやこれほどの快晴を逃す手はない。しかも平日で利用者も少なく落ち着いている。

到着がそれほど早いわけではなかったが、海の展望が良い最前列にテントを設営できた。実はこのキャンプ場は全体的に傾斜地が結構多く、海沿いに平坦な場所はかなり少ない。
そのため、先にチェックインしていた二組は、海沿いを避けて設営していた。釣り人や純粋なキャンパーという感じだったので、ぼくとは目的が違うのも良かった。
ちなみにトイレは虫まみれで、サイトの草刈りも一部分のみ。たぶん海水浴シーズンじゃないのも影響してるかもだけど、有料キャンプ場なのに全体的に管理は甘い。
年々値上げしているみたいで、隣接するお風呂も1,000円はちょっと高い。…とまあ色々言ったけど、抜群のロケーションに勝るものはないので我慢我慢。
荷物を広げた瞬間、旅の誤算が発覚する…

敷地内にあるコインシャワーですっきりし、日没までまったり晩御飯でも食べよう。そう思って手持ちのバーナーを用意していると、この旅で最大のミスに気づく。
SOTO フュージョントレックは、OD缶専用の分離式バーナー。これは自己責任になるんだけど、市販の変換アダプタを接続すれば安価なCB缶も使えるようになるんだよね。
防災備蓄で自宅にCB缶が大量にあるので、この旅で積極的に消費したくてこの組み合わせを採用。でもその肝心の変換アダプタがなく、お湯が沸かせずポカーン状態。

消費期限が近くなったパウチご飯と防災食。これも防災備蓄の消費で選んだのに、肝心のご飯が温められない。結局肉じゃがだけを常温でそのまま食べることに。
改めて事前準備の大切さに気付いた瞬間。いつも行き先を直前まで迷うから、準備も忘れ物が多いので反省。まあ明日の昼には両津港近くまで行くので、なんとでもなるだろう。
海に沈む夕日と長く続くマジックアワー

そしてようやく迎えた待望の夕日の時間。なんやかんやトラブルあったけどもう気にしない。シルエットになった二ツ亀のそばを、ゆっくりと海に向かっていく太陽。
西日を横から受けて、キラキラ輝くテントのフライシート。夏場は虫が寄ってきてウザいと毎回思うこの色も、この時だけは白にして良かったなーと思える。

この日は遠くまで空気が澄んでいて、水平線に綺麗に沈む夕日が見れた。
いつもはあっという間に沈んでしまうのに、佐渡島が少しだけ日没の時間を遅らせているようにも感じた。

本来なら刻一刻と色が変わる時間帯のはずなのに、グラデーションの空は長く続いた。完全に日が沈んでから、約一時間ほど空は明るいままだった。
テントの中に入り、マジックアワーの空をぼうっと眺める。最高のスタートの初日の余韻を噛み締める。本当に佐渡に来てよかった。
そう思いながら、気づけば眠りについていた。
肉眼でも見えた、二ツ亀の満天の星空

アラームをかけていた訳ではないんだけど、夜中にふと目が覚める。ぼくは自然豊かな場所に野営すると、勝手に体内時計が起動する。
寝ぼけ眼で空を見上げると、ソフトフィルターにかけたように星が滲む。空を見上げた瞬間、満天の星空だとすぐに理解する。肉眼でもはっきりと見える天の川。

ウラジオストクまで769km。数字だけ見れば気の遠くなる距離だが、この果てしない景色の中では、海の向こうが少しだけ身近に感じられた。
背景の星空には一筋の流れ星と、シルエットになった二ツ亀の姿も。遠くまで来たことを、静かに実感するような瞬間だった。
朝焼けの空に見送られ、二日目スタート

そして迎えた翌朝、日の出の時間を待つ。つい数時間ほど前に星を見ていたのに、もう空はオレンジ色に染まっている。
水平線の向こうから、少しずつ光が漏れ出してくる。昨日からめまぐるしく移り変わる空の色に、翻弄され続けている。

太陽が顔を出すと、海に煌びやかな柱ができた。すぐ真上には羊雲が集まってきて、下から光を受けて赤く染まり出す。


昨日の夕暮れ以降、シルエットだった巨岩達。朝日を受けて赤く染まり、まるで目覚めるように、二ツ亀と大野亀が姿を表す。

やがてオレンジだった光達は、黄金色に輝きながら羊雲を照らす。美しい朝焼けで見送ってくれて、最高の形で二日目のスタートを切る。
早朝の撮影を終えて満足したので、テントに戻って二度寝をかました。だって時刻はまだ5時過ぎだし、睡眠が細切れなので眠すぎた。
しばらくは心地よく眠っていたが、蒸し暑くて目が醒める。日差しがダイレクトに当たるので、テントの中はサウナみたいになっていた。
島を南へ、佐渡を一周する後半戦

外に出ると潮風が火照った身体を優しく撫でてくれた。離島なので風が強いことが多いらしいが、この日も穏やかな風で心地よかった。
ホテル駐車場からリトルカブを連れてきて、まったりと撤収作業を開始。基本バイクの横付けはできないけど、荷物運搬時だけは例外。
愛車と横並びに写真を撮ることができるのは、キャンプ場利用者だけの特権。荷物をまとめる時の雑多な雰囲気は、旅情感があってとても好きだ。
大きな亀達との戯れを終え、両津の街へ


昨日は夕方で海の色彩を失っていたが、今朝は順光で海の青さがくっきり。二ツ亀へ続く細い道の両脇に、美しい佐渡ブルーが広がる。
二ツ亀海水浴場へはキャンプ場から降りられる。このまますぐ出発するのももったいない。せっかくなので少しだけ散策をすることに。

お気に入りのギョサンで海に飛び込み、波打ち際で少し水遊びをする。泳ぐには冷たすぎる海水は、眠気覚ましにちょうどよい。

二ツ亀海水浴場まで降りると、別角度からの大野亀を拝むことができる。丸みを帯びた亀っぽさは薄れて、先端が尖った岬のような、また違った雰囲気を楽しめる。
ここからもう半周をスタートすると、この最北エリアへは再訪予定はない。後ろ髪引かれていることに気づき、最後にもう一度だけ大野亀を歩くことにした。

朝は人も少なく静かな遊歩道をまったりとお散歩できた。素直な晴天順光で空の青と、草原の緑がよく映える。定番の構図だけどこれも抑えておかないとね。
手前のトビシマカンゾウは控えめ、ここは日当たりが良いので枯れやすいのだろう。今度来るときは家族を引き連れて、花盛りの時期にまた来ようと思う。

少し汗ばむ身体に、大野亀ロッジのソフトクリームの甘さが染みる。まだ梅雨入り前だけど、この日差しの強さはもう夏と言ってもいいぐらい。
佐渡名物の大きな亀たちと朝の戯れを終え、ここから本格的に移動を再開することに。まずはそのまま海沿いを走り、佐渡の玄関口の一つがある両津を目指す。

特に寄り道することなく海沿いを快走し、小一時間で両津に到着。夏を感じさせるもくもくし雲が商店街の隙間から顔を覗かせる。
ちょうど佐渡中央ぐらいに位置し、もう少し進むとだいぶ栄えた雰囲気になる。家電量販店や飲食チェーン店もあり、いい意味で離島らしさを感じさせない。
後半はこの付近に拠点に構えて、観光名所を巡るつもりだ。周辺の利便性をチェックして、ガソリンスタンドで給油、用事は先に済ませておいた。
あとは地元スーパーに入って、品揃えや価格をさらっと下見。だいたい物価は本州より2割増って感じで、鮮魚は流石に安くて量も多い。
昨晩からまともにご飯を食べていなかったので、流石にお腹ペコペコだ。誘惑を振り切って予定していたお店へと移動。
地魚定食と看板猫、そして海沿いを進む


両津港近くにある定食屋、キッチンよろこんででお昼ごはん。開店時間に合わせて時間調整していたので、行列に並ぶことなくスムーズに入店できた。
お店の玄関マットには、猫が寝そべって寛いでいた。近くを見渡すと他にも何匹かウロウロしていたので、この辺りに住み着いているのかも。

地魚刺身定食のご飯大盛りを注文。新鮮な佐渡産の地魚が、豪快な舟盛に乗せられている。お値段は2,080円也。
毎日提供される魚は異なり、この日はひらめ、たい、ぶり、クロダイ、メジナ、イソダイ。ぶっちゃけ、どれがどれかよく分からない笑
厚切りで歯ごたえがあり、新鮮なのは間違いない。付け合わせのブリカマの煮付けはほろほろで、ご飯がめっちゃ進む濃い味。
ちょっと値段は高かったけど、価格に見合うクオリティだ。ようやくご飯にありつけて復活、ここから海沿いの気になる場所を巡っていく。

次に向かったのは、姫崎灯台。地図で言うと佐渡島の一番東端あたり。現存する日本最古の鉄造りの灯台で、世界灯台100選にも選ばれている。
白い六角形の灯台が、青空にすっと立つ姿が印象的。見上げると、絹糸のような薄い雲が広がっていた。派手さはないけど、佐渡島の灯台では一番好き。

灯台の手前には個人で管理している花畑があり、観光客向けに無料開放してくれている。ちょうど手入れをされてて、話を聞くとなんと島外の方。
実家がこの姫崎灯台の近くで、普段は東京の品川で生活しているらしい。それにも関わらずこのクオリティ…。すごすぎる。
他にも無料キャンプ場があるので、野営地候補として下見も兼ねたけど、ここへは廃ホテルを横切る形になり、怖いので今回はパス。

赤茶色の岩場で群れるウミネコ。すぐそばにある防波堤の間から漁船が出航していくが、気にする様子もなく寛いでいる。

ぽっかりと空いた洞穴、赤亀岩の周囲には透き通る海。この辺りの岩場は赤茶色が多く、周囲の海とのコントラストが際立つ。
海沿いの気になる景色があれば、足を止めて写真を撮る。初日と同じ動きだけど、見どころが集中しすぎないので、まったりと進む時間が心地よい。

海沿いの集落を抜けて、山間を進むと岩首昇竜棚田が見えてくる。最上段には展望台も設置され、写真愛好家からも人気の場所だ。
ちょうど今は田植えの時期で、田んぼには水が張られている。朝焼けのリフレクションがとても美しく、その下見も兼ねてここまで上がってきた。
細い農道を登ることになるので、小型のバイクか軽自動車推奨。ところどころとんでもない斜度で、一速でひいひい言いながら登った。

途中の分岐にあった、養老の滝もチラ見。駐車場からすぐなので気軽に立ち寄れる。遊歩道のひんやりとした空気が心地よかった。
余談だけど、同名の滝が全国にいっぱいあるよね。特に有名なのは岐阜の養老公園だと思うけど、なんでこんなにたくさんあるんだろう。不思議。
灯台のそば、海辺に今夜の拠点を構える

一通り巡りを終えたら、松ヶ崎ヒストリーパークへ。ここは全国的にもとても珍しい、灯台のそばに設営できるキャンプ場。
小木まで戻るとキャンプ場がないので、今日の寝床はここに決定。先ほど下見した岩首昇竜棚田からも近く、翌朝の撮影も考慮して選んだ。

目の前には日本海と気持ち良い芝生サイト。トイレも清潔でしっかりと管理されていて、完全無料で予約不要なのが素晴らしい。
海沿いを走れば小木港、山間部を抜ければ佐渡市街地と、アクセスも良い。佐渡島の無料キャンプ場では、ここが一番バランスが良いと思う。


設営を終えたら少し南側に走り、サンライズ城が浜へ。日帰り入浴は600円也。内湯はガラス張りで海側の景色が開放的。サウナあり。
畳の休憩部屋もあるので、風呂上がりはここでゴロゴロ。旅先で何もしない時間があると、ゆとりがあって贅沢な旅に感じる。
大将の暖かい人柄と絶品カツ丼に癒される


すぐ目の前には、春日という食事処がある。実はここの口コミが気になって、夜ご飯はここと決めて、時間調整して開店を待っていた。
店内はこじんまりとした、島の居酒屋という雰囲気。店内には佐渡島の写真が多く飾られていて、壁面はとても賑やかだ。

このお店の名物である、上生カツ丼。新潟はタレカツ丼が有名だけど、ご飯の上にスライスたまねぎを敷いて、溶き卵を上からかけるオリジナル料理。
ところどころカツのサクサク感が残り、甘いタレと卵がほどよく絡んで美味。ご飯大盛りでも1,100円という安さも魅力。
なにより大将の人柄が最高。お互い写真好きなのもあり、しばらく写真談義で盛り上がる。
この後、夕日を見に西海岸まで出るのを迷ってると言うと、「絶対に行った方がいい!」と、急いで料理を提供して、背中を押してくれた。
島一周の終わりへ、最後の景色を追いかける

春日の大将に背中を押された勢いのまま、小木を越えて西海岸へ。坂道を駆け上がった先、シルエットになる電柱とリトルカブ。
視線の先には、まんまるの夕日が顔を覗かせる。今日は最高のコンディション、下見をしていた万畳敷へと急いだ。
万畳敷で出会った優しいグラデーション


日没寸前の万畳敷とマジックアワーに染まる空。自然が作り出した斑模様に、優しい空の色がリフレクションしている。
水平線に沈もうとする夕日は、輪郭がはっきりとしている。鏡のような静かな海面には、薄い紫やピンクの色彩が滲むように広がる。

優しいグラデーションが万畳敷を包み込む。水平線には薄紫色の帯が横に伸び、海底だけ色を失ったようにモノクロへ沈んでいく。
ちょうどここで家族からのビデオ通話。息子と妻にもこの景色をシェアしながら、お互いの今日一日を報告し合った。
小さな子供がいる父親なのに、たまにこうした自由な時間を持てる幸せ。妻や息子、家族には本当に感謝しかない。
暮れゆく空を背に、海辺の拠点へ戻る

暮れゆく空に別れを告げて、設営したキャンプ場に戻る。実はアウターを着忘れてしまい、帰りは半袖・短パンで凍えながら帰った。
これでちょうどぐるっと、佐渡島を一周したことになる。海沿いをただ走るだけだったけど、素晴らしい景色にたくさん出会えた。
特に大野亀、二ツ亀で過ごした時間は特別だった。時間帯によっても表情を変え、美しい空と海で完全に心を掴まれた感じがある。
海沿いを中心に巡った前半戦はここで一区切り。後半は海沿いだけではない、佐渡島の魅力を深掘りしていく旅になる。


コメント