毎年、秋になると紅葉を撮りたくなる。ところが、今年こそはと思っているうちに、気づけば見頃を過ぎていることが多い。
2025年もそんなことを考えていたところ、せっかくならどこか綺麗な場所へ写真を撮りに行こうと、土曜の昼過ぎに急遽行き先を決めた。自宅からも比較的行きやすく、秋の風景を撮るならまず思い浮かんだのが、滋賀県高島市のメタセコイア並木だった。
翌朝の混雑を少しでも避けるため、その日のうちに向かい、すぐそばで車中泊することにした。琵琶湖の湖西道路を快調に走り、マキノピックランド周辺に到着したのは19時過ぎ。
ところが、目的地へ近づくにつれて対向車線には長い渋滞の列が続いている。まだ夜なのにこの混雑ぶり。翌朝はいったいどうなるのか、少し不安になるほどだった。



メタセコイア並木のすぐそばにあるマキノピックランドの駐車場に車を停め、あとは寝るだけ。お風呂もごはんも済ませているし、こちらとしてはもう休みたいところだった。
ところが、三歳の息子はまだまだ元気。ヘッドライトを装着すると、年少さんの夜な夜な散策が始まった。
この日、彼がいちばん夢中になったのは、どんぐりだったらしい。小さな紙コップいっぱいになるまで集めると、今度は車の荷室へ持ち込み、溝にひとつずつ並べて遊び始めた。
赤ちゃんの頃から車中泊であちこち連れ回してきたこともあってか、車を寝床にすることにはあまり違和感がないようだ。大人が「明日の撮影のために早く寝よう」と思っている横で、本人は本人で自分なりの遊びを見つけて楽しんでいる。
こういう時間も、車中泊の旅ならではなのかもしれない。


翌朝、7時前に目を覚ますと、すでに近くから車の行き交う音や人の気配が聞こえてきた。
外に出てみると、マキノピックランドの第一駐車場はすでに満車。第二駐車場にも次々と車が入ってきていて、ナンバープレートを見ると他府県から訪れている人もかなり多い。
週末なのである程度の混雑は予想していたものの、まさか朝7時前からここまでとは思わなかった。
前日の夜に到着しておいて正解だった。もし朝から車で来ていたら、駐車場に入るだけでもかなり時間を使っていたかもしれない。

そして帰る頃には、臨時駐車場もこの状態。
駐車できる台数自体はかなり多いように感じたけれど、紅葉の見頃を迎える週末ともなれば、昼頃にはそれでも埋まってしまうのではないかと思うほどだった。
SNSなどで年々人気が高まっているとは聞いていたけれど、ここまでの人出を実際に目の当たりにすると、その人気ぶりを実感する。



メタセコイア並木は駐車場からすぐ目と鼻の先。ところが、並木道の入口に立って、さらに驚いた。すでに道路にはひっきりなしに車が行き交い、ゆっくりと走る車が連なってちょっとした渋滞のようになっている。
歩道の両側にもたくさんの人。写真を撮ろうとする人も多く、なかには車道に入り込んで撮影している人もいる。これでは、人も車も構図から外して撮影するのはほとんど不可能だ。
SNSで多くの写真が紹介されるようになって、さらに人気が高まったのだと思うけれど、実際に訪れてみると想像以上の混雑だった。
正直なところ、静かに落ち着いて絶景を撮影したいと思って訪れるカメラマンなら、少し戸惑うかもしれない。
メタセコイア並木は観光地である一方、地元の人たちが普段から利用する生活道路でもある。写真を撮ることに夢中になって道路を塞いだり、車の通行を妨げたりしないよう、訪れる側も少し気をつけたいところだ。

そして、実際に訪れて特に伝えておきたいのが、メタセコイアの「色」について。
メタセコイア並木の紅葉は、一般的に11月中旬頃から色づきはじめ、11月下旬から12月上旬頃に見頃を迎えると言われている。
ぼくらが訪れたのは2025年11月30日。この年の見頃を迎えた時期だったと言っていいと思う。ネットやSNSには、オレンジや赤に近い、とても鮮やかなメタセコイア並木の写真がたくさん出てくる。
でも、実際に自分の目で見たメタセコイアは、もっと落ち着いた色だった。鮮やかな赤というより、れんが色や茶色に近い色味。
もちろん天候や時間帯、光の当たり方によって見え方は変わるけれど、少なくともこの日にぼくが見た風景は、SNSで見るような派手な赤一色の世界ではなかった。
観光協会などでも、メタセコイアの紅葉はもみじのような真っ赤ではなく、「れんが色」や「茶色」といった表現で紹介されている。
だからこそ、ここではできるだけ実際に見た色に近い写真を残しておきたいと思った。ネットで見た写真をイメージして現地を訪れ、「思っていたより茶色かった」とがっかりする人が少しでも減れば嬉しい。

とはいえ、実際の色味が落ち着いているからといって、メタセコイア並木の美しさが損なわれるわけではない。
全長約2.4kmにわたって約500本のメタセコイアが並び、マキノ高原へと続いていく景色は、やっぱり紛れもなく絶景だった。歩道脇に三脚を立てて、しばらく撮影を楽しむ。
人が歩き、車がゆっくりと行き交う。その向こうに一直線に伸びるメタセコイア並木。個人的には、むしろこうした人の気配や車の流れまで含めて、この場所の今の姿なのだと思えてきた。
この日はあいにくの曇天だったので、太陽の光が差し込めばまた違った表情になるはず。いつか平日にゆっくり時間を取って、もう一度訪れてみたい。


紅葉のメタセコイア並木を歩いたあとは、マキノピックランド周辺でランチ。周辺にはカフェや食堂もあるので、並木道の散策とあわせて昼ごはんを楽しむのもよさそうだ。
ぼくらは駐車場のすぐそばで移動販売していたピザをいただくことにした。
マキノ町で営業している「薪窯Pizzaまっきーのお店」というお店で、週末にはこのメタセコイア並木周辺でも移動販売しているらしい。
移動販売だからと侮っていたわけではないけれど、薪窯で焼き上げる本格的なピザで、香ばしい香りにつられて思わず購入。

最近、我が家でハマっているクアトロ・フォルマッジョをいただいた。チーズ好きの息子にも食べさせてみたけれど、ひと口目はなんとも複雑な表情。
どうやらゴルゴンゾーラの風味は少し苦手だったようだ。それでも戸惑いながら、結構な勢いで食べ進めていた。
紅葉を見に来たはずが、気づけばピザを食べたり、どんぐりを拾ったり。こういう寄り道も家族旅の楽しいところだ。



この頃の息子は、少しずつ写真に写る自分にも興味を持つようになっていた。
撮った写真を見せて、とよくせがまれるようになったのもこの頃。
この日の秋色の風景の中では、茶色や黄色、赤など暖かみのある色でまとめた服がよく似合っていた。最近買った赤いコンバースも、メタセコイアの色に負けずによく映えている。
大人にとっては紅葉の名所でも、三歳の息子にとっては、並木道の周りに落ちているもののほうがずっと面白かったらしい。
歩きながら地面を眺め、気になるものを見つけると手に取って、妻に渡す。ぼくらが「紅葉を見に来た」と思っている同じ場所で、息子は息子なりの秋を見つけていた。

最後に手渡されたのは、小さな手の中に収まった赤い紅葉と松ぼっくり。息子の小さな手の中にも、ちゃんと秋が広がっていた。
三歳の子どもに紅葉狩りなんてまだ早いかな、と少し思っていたけれど、そんな心配は必要なかったのかもしれない。大人が見ている秋と、子どもが見ている秋は、きっと少し違う。
鮮やかなメタセコイアの並木を眺めることだけが、秋を楽しむことではない。足元に落ちたどんぐりを拾ったり、赤い葉っぱを見つけたり、集めたものを車の中に並べてみたり。
そんな小さな発見の積み重ねも、その子にとっては立派な旅の思い出になる。今年もまた、気づけば短い秋が過ぎていく。
次に訪れるときは、今度こそもう少し静かな時間に、メタセコイア並木を歩いてみたい。
メタセコイア並木
住所:〒520-1834 滋賀県高島市マキノ町寺久保〜牧野|地図
紅葉の見頃:11月中旬〜12月中旬頃
駐車場:マキノピックランド駐車場ほか
アクセス:JR湖西線「マキノ駅」からマキノ高原線バスで「マキノピックランド」下車
入場料:無料
※紅葉シーズンの休日は周辺道路が混雑します。早い時間帯や平日の訪問がおすすめです。紅葉期間中は臨時駐車場が設けられる場合があります。


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